top of page

Q&A スタディツアーにおける新型コロナ対策

 

コロナ禍を経て再開されるNGOの海外スタディツアーは、様々な点でこれまでと異なる新しい状況の中で実施することになります。具体的なプランを進めようとすると、直面する課題に答えを見つけられないケースや、判断に迷うケースにぶつかってしまいます。

「セーフ・トラベル・セミナー 連続フォーラム ポストコロナ時代のスタディツアー再開のために」の第18回フォーラムでは、難しいケースの答えを求めて宮川眞一医師とともに「Q&A スタディツアーにおける新型コロナ対策」を作成しました。

このQ&Aは2022年12月時点の情報にもとづき、NGOの海外スタディツアーの実施を想定した宮川眞一医師の意見をもとに作成したものです。新型コロナ対策には国際的に統一した基準があるわけではありません。海外で受診した医師の意見や判断が異なることもあります。航空会社によっては、搭乗に際しコロナ対策としてマスクの着用を条件としていないケースも見られます。コロナ禍を経たスタディツアーは、それぞれに微妙に異なる各国のコロナ対策の基準の中を、国境を越えて実施しなければなりません。具体的ケースでどうするのか?混乱を避けるためには、ツアーとしての基準の考え方をあらかじめ示して、参加者の了解を得ておくことが必要となります。このQ&Aを参考に、それぞれの訪問国や訪問地域の最新情報におうじた「ツアーとしての基準の考え方」を作成してください。「専門家の意見を反映した、できる限りの感染対策」をとって、ツアーを実施しましょう。

 

Q・自分自身の健康管理だけでなく、他の参加者や現地で受け入れてくれる人の安全のために、旅行前の健康状態をチェックして記録したいと思います。どのようにすればよいのでしょうか?

 

A・出発の10日以上前から健康状態をチェックして記録をつけてください。

健康状態チェックの項目

(1)検温の記録(午前と午後2回以上)

(2)行動の記録(どこに行った・誰と会ったなど、日付と時刻を記録してく

ださい)

(3)会合・会食の記録(濃厚接触の可能性の記録です。ふだん会っていない

人、特にコロナ発症の多い地域の方との接触の有無を記録してください。会った場合には、その方のワクチン接種記録、移動の内容や・食事の席の場所を記録してください。この記録は、発症時に濃厚接触者を追跡するためにも必要です。)

(4)症状の記録(自分の基礎疾患や服薬について、たとえば高血圧の人は血

圧を、糖尿の人は血糖変化を記録してください)

 

Q・旅行前の健康状態の記録やワクチンの接種記録を、現地で受け入れてくれるNGOと共有したいと思います。どのようにすればよいのでしょうか。

 

A・現地受け入れにあたるNGOに下記の情報(サーベイランス)を提出してください。

(1)上記 (1)〜(4)の健康の記録

(2)ワクチン接種記録・回数(特に最後の接種日を明記してください)

   ワクチンの会社名と種類(例)ファイザー・2価ワクチン

(3)新型コロナの感染既往歴(家族を含めた)

(4)できれば、現地受け入れスタッフや交流団体にも同様のサーベイランスを実施できれば安全度はますでしょう。

※サーベイランスとは、感染症を継続的に注意深く監視すること

 

Q・コロナ対策はどんなに頑張っても、絶対だいじょうぶとは言えません。ツアーの案内などに「十分な感染対策をとっています」という表現を使ってもよいのでしょうか?

 

A・ニュース番組やイベントで「十分な感染対策」という表現が使われています。では、何をもって「十分な」といえるのでしょうか?感染症対策においては、根拠や基準をあげることができない主観的な表現は適当とはいえません。今、考えられる、そして、その環境で考えられる実現可能な感染対策を行っている、という意味で「専門家の意見を反映した、できる限りの」と表現するのが適当ではないでしょうか。

 

Q・コロナ対策として、参加者や引率者はどのようなものを持って行く必要があるのでしょうか。また、現地のスタッフは、どのようなものを準備する必要があるのでしょうか。

 

A・

・各自で持参するもの

  • 体温計(同行スタッフが予備を持参、できれば直接測る型と非接触型)

  • マスク(同行スタッフが予備を持参)

 

・同行スタッフ、現地スタッフが準備するもの

3)サチュレーションモニター(血中酸素濃度測定器)(グループに一つ)

4)消毒剤(グループに一つ)

消毒用アルコールを航空便で運ぶことはできないので現地で調達した消毒剤)

5)解熱剤(グループとして、多めに持参)携帯常備薬

6)PPE(個人防護服)(グループとして、多めに持参)

(感染防御のエプロン・マスク・シールド・キャップ・手袋など)

7)抗原検査キット(グループとして、多めに持参)

(検査キットは有効ですが、検査結果は絶対ではないことに注意しましょう)

※参考情報:

・日本での価格は1テスト1200円〜1500円程度です。参考に日本の医療機関で使用されている一例をあげておきます。「クリニテスト COVID-19抗原迅速テスト」 

・香港では町中のコンビニなどでも購入することができて、日本よりかなり安いとのことです。価格的には海外での調達が有効かもしれません。ただし、日本でも海外でも、質の悪い検査キットがあるため、医療機関に相談するなど、適切な検査キットを慎重に選ぶ必要があります。

 

Q・マスクの着用と換気について

どんな時にマスクをする必要があるのでしょうか。人と人の距離や、換気はどのようにするべきなのでしょうか。

 

A・屋内や乗り物など密閉空間ではマスクを着用するようにしてください。食事の時はマスクなしになりますが、基本は黙食にすべきでしょう。屋外では、人と人の距離が取れるようであれば、マスクなしでもかまいません。暑い場所でマスクをすると、熱中症のリスクがあることにも気をつけましょう。

 

換気はこまめにしてください。できる限り気流の変化が常にあるように気をつけましょう。気流の下流に集まらないように集団の配置を心がけてください。

集団行動時には人と人の距離をしっかりとりましょう。ミーティングの時も、人と人の距離とるようにしてください。相部屋では、換気を心がけてください。食事の時に感染リスクが高くなります。人と人の距離をとり、黙食するのが基本です。バス移動や、航空機移動の際は、日本の国内線航空便の基準が参考になります。

 

Q・発熱者への対応

ツアー中の参加者に発熱がある場合どのように対処すべきでしょうか。発熱者の別室隔離や移動の際の車など、ゾーニングはどの程度必要でしょうか?

 

発熱が発覚した時点で、可能ならばすぐに集団とは分離してください。施設内に居るときは別の部屋にしてください。移動中の場合は別の移動手段をとってください。

集団との分離や別行動が不可能な場合は、もしもの時にそなえて、感染者数をおさえる対策をとってください。ホテルならフロアを変えてください。移動の際の同行者は、最低限にしてください。食事時・会話時の感染が多いことを考慮し、食事はいっしょにとらないでください。

移動がなく、同じ場所に滞在している場合は、できれば1日2回以上、滞在場所の消毒をしてください。食事の前後には食堂は消毒を実施してください。

 

Q・咳が出ている、発熱がある、ノドが痛い、などの症状がある場合の相部屋から個室に隔離する基準は、どうなるのでしょうか?

 

発熱があれば37.5度が基準といわれていますが、ふだんの体温が低い人もあります。自分の平熱を知っておくと発熱を判断しやすくなります。体温が基準以上で、発熱の原因が明らかでない場合は、すぐに発熱者の隔離が基本です。

迅速な隔離とともに、抗原検査をなるべく早く実施しましょう。

 

Q・隔離解除できる基準は、どうなるのでしょうか?

 

発熱が続く場合は、医師の診断を受けていただきます。診断後の隔離解除については医師の判断に従います。発熱の原因が、膀胱炎など新型コロナとは別の原因が明確な場合は隔離を解除することができます。

発熱が続かない場合で、医師の診断を受けず、発熱の原因が明確ではない時には、抗原検査キットの検査結果によって判断することとなります。ツアーは集団生活であり、宿泊施設の条件や、旅行日程も限られています。抗原検査キットでの検査結果は絶対とはいえませんが、繰り返し検査することで陰性である可能性は高くなります。発熱した本人や他の参加者がいっしょに旅行を続けるには、隔離解除の考え方をあらかじめ示して、参加者の了解を得ておく必要があります。ここでは、考え方の一例をあげておきます。

 

・隔離解除の考え方

発熱が続かない場合で、医師の診断を受けず、発熱の原因が明確ではない時は、まずは隔離とします。発熱日を0日とし、1日目、2日目と3回の抗原検査キットでの検査が陰性となり、さらに3日目に4回目の抗原検査キットで陰性となった時点では隔離解除としてもある程度の信頼性は保たれると考えてよいでしょう。

 

これは、2022年12月の日本における医療従事者が濃厚接接触者となった場合の待機期間の考え方を参考にしたものです。医療従事者や介護従事者の濃厚接触者の待機期間は、感染者との接触日を0日とし、1日目、2日目の抗原検査キットでの検査が陰性となり、さらに3日目に抗原検査キットで陰性となった時点で、待機解除とされています。さらに、健康観察と感染対策の徹底の期間を7日間としています。

 

まとめ

 

スタディツアーの一番の魅力は、「出会う、ふれあう、学びあう、」ことで得られる海外での貴重な体験にあります。「スタディツアーにおける新型コロナ対策」は、「人々とふれあう」スタディツアーで、「人々とふれあわない」感染対策を、私たちに求めているように見えます。まるでアクセルとブレーキを同時に踏むような問題です。このQ&Aを見て、NGOのスタディツアー担当者は頭を抱えるかもしれません。しかし、感染対策や危機管理を理由に、交流や出会いが少しでも萎縮するようであれば、そもそもスタディツアーを実施する意味がありません。「専門家の意見を反映した、できる限りの感染対策」をとって、大胆に、「人々とふれあう旅」の再開に挑戦されることを期待します。

bottom of page